稲川淳二盗作疑惑について知るところ

夏になるとアイスクリーム屋のおじさんがいるでしょ。
あたしね、子供心にも「あのおじさん、夏が終わったらどうしてるんだろ~」なんて思ってたんだ。
そしたらあたしもね、アイスクリーム屋のおじさんみたいに夏しか仕事が無くなったんだ。

ってことで、季節外れの稲川淳二の話。

ちなみにではあるが、いまとなっては怪談の語り部のイメージしかないけど、彼は山崎邦正出川哲朗より前からの元祖リアクション芸人であり、彦麻呂や石塚英彦より前からの元祖グルメリポーターだったし、 工業デザイナーとしての受賞歴もある。
かなり多才な人物なのである。

稲川淳二がかつて語っていた話で、怪談ファンの方ならご存知かも知れない「ハトの出る部屋」という話がある。

M君が学生時代の話。
寮の先輩が言うには、早朝に鳩が窓から入ってきて、ククッと鳴いて部屋を散歩するという。
でも目を開けてしまったら鳩が出ていきそうだし、朝も弱い先輩は物音を聞くだけだった。
起きる頃には鳩は出て行ってしまうので、先輩は鳩の姿は直接観たことが無い。
先輩が外泊した日のこと、先輩の言う「鳩」がMくんのところにやってきたのだけど…

この話の盗作疑惑を最初に知ったのは、確か99年ころの「噂の真相」だったと記憶する。
この話が怪談本として有名な「新耳袋」に同じ内容の話が掲載されており、稲川淳二が盗用していると書かれていたのだ。
だけど、この話が「盗用」と言うにはちょっと違うことも知っている。
というのも、稲川淳二は「ハトの出る部屋」の話をした際、「私の知人で大阪で中山という男がいて、彼から聞いた話なんですよ」と始まっているのだ。

 

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この動画では話の触りで「私のね、ブレーンというのかな。私の仲間内でもって作家の中山という男がいるんですよ」と、中山自身の経験談であるとして始まっている。

 

中山と言うのは、「新耳袋」の著者の一人である中山市朗のことだ。
つまり、稲川淳二のブレーンをやっていた時代もあり、盗用どころか正当なネタ提供者だったのだ。
また、かつては稲川淳二と中山市朗はとても仲がよく、2人で飲みに行くこともよくあったという。

しかし、現在はこの2人は決別している。
原因は稲川淳二の怪談を書籍化だった。
中山から提供されていた話を、著書の中で稲川淳二自身の話としたのだ。

と言っても、書籍化が直接の原因ではなかった。
稲川淳二は業界から人格者として知られている。
この件に付いては即座に中山に対して謝罪したし、中山としても、「稲川さんも作家でないし、著作権の取り扱いについてはよくわからないでしょう」と不問にした。

だけど、双方で解決したはずのこの盗用問題をよく分からずに騒ぐ人たちがいた。

中山が言うには、直接の原因はワイドショーだったそうだ。
完全に稲川側を擁護する論調で取り上げられてしまったのだ。
また、ワイドショーの司会者には「なんで稲川さん、叩かれなきゃ行けないの?」、更には「怪談なんて著作物じゃないでしょ。だから著作権も存在しない」とまで言われる。
中山にしてみれば、自分が加害者であるかのように叩かれることに大いに不満を感じた。
またこの番組においては中山の意見は全く聞き入れられず、ワイドショー側からは取材の電話の一本もなかったという。
結果として両者の仲は悪化した。
再度の交渉の機会も、稲川側が拒否したという。
これについては、事務所側がそうさせたのかも知れないと、中山は推測している。

中山は「マスコミは黒いものでも白に、白いものでも黒にする恐ろしいものだ」と述懐していた。
そう言えばハイエナの如く「反権力」を称す「噂の真相」のいい加減さもなんとも酷いものである。

と、雑誌やネットで書かれてる話をまとめたんだが、おれはかつて何度も「新耳袋」のイベントには参加していたのだ。
時期的に、まさにお互いの仲が決別しつつある時期だったと思われる。
騒動は知らないけれども、「新耳袋」と稲川淳二の怪談とで酷似する話があったのは気がついていたので、中山本人に「稲川さんと同じ話がありますよね」聴いてしまったことがある。
あの頃は若かったんで恐れを知りませんでした(笑)。
「稲川さんとうちは関係ない。たまたま似てしまっただけでしょ」と、非常に不機嫌な顔をされての返答だった。
なぜここで、「私が元ネタなんだけどね、いろいろあってさ」とか、真実とまでも言わないまでもそれに近い返答がなかったのだろう。
多分、同様の質問を散々されていて、「またかよ」って不機嫌になったんだろう(笑)。

両者には、まだまだ知られないわだかまりがあるんだろう。
あれだけ中の良かった二人が、ワイドショーの放送一本で仲が嫌悪になるというのも、どうも考えられない。
この件に関し、「新耳袋」のもう一人の著者である木原浩勝の意見は、寡聞にして知らない。

この辺の詳細を、実話ナックルズあたりで特集してくれないかなあと、ゲスい知識欲が出てくるんです。
小池壮彦先生か蜂巣敦先生あたりかで、書いてくれませんかね?